[定義集]刑事訴訟法[定義・規範集]

刑事訴訟法

強制処分

「強制の処分」:重要利益侵害説(刑訴法197条1項但書
相手方の明示または黙示の意思に反して、その重要な権利・利益を実質的に侵害するものを意味すると解する。
 その理由は、以下のとおりである。①意思に反しない以上、侵害を観念することはできないし、意思に反する点では明示・黙示であれ価値的には同一であるといえる。②また、強制処分は強制処分法定主義、令状主義等の厳格な要件・手続が必要であるとされているため、そのような保護に見合うだけの重要な権利・利益の実質的な侵害を伴うものに限定すべきである。

「強制の処分」:GPS判例
強制処分とは、個人の意思を制圧して身体、住居、財産等の重要な権利・利益を実質的に侵害し、制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為をいい、ここにいう「意思を制圧する」とは、現実に表明された相手方の反対意思を制圧する場合、明示の意思に反する場合のほか、これと価値的に異なるところのない合理的に推認される相手方の意思に反する場合を含む。

任意処分の限界(刑訴法197条本文)
任意処分であっても何らかの権利・利益の侵害を伴う。そのため、捜査比例の原則(刑訴法197条1項本文)を適用すべきである。具体的には、当該処分を用いる必要性・緊急性と被侵害利益の程度とを比較考慮し具体的状況の下において相当と認められる限度において許容されると解する。

写真撮影・ビデオ撮影行為
強制処分該当性の検討:人が通常その容貌等を観察されない合理的期待が認められる私的領域にいる状況を撮影する行為は、容貌をみだりに撮影されない自由、住居の平穏などの重要な法益をも併せ侵害するため、強制処分に該当する。
任意処分該当性の検討:嫌疑の合理性や撮影の必要性・相当性と被侵害利益の性質や侵害の程度を比較衡量し、社会通念上相当と認められる限度においてのみ許容される。

検証
五官の作用によって対象の存否、性質、状態、内容等を認識、保全を強制的に行おうとする性質を有する行為をいう

エックス線検査
エックス線検査は、射影により内容物の形状や罪質をうかがい知れる上、捜査機関は内容物によっては、その品目等を相当程度具体的に特定することも可能である。そして、X線検査はX線を用いて視覚的にその内容物の形状を認識、記録する処分であり、検証にあたる。

おとり捜査の適法性
【定義】おとり捜査は、捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働き掛け、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するものをいう。

職務質問に関連する強制処分等

不審事由の認定警職法2条1項
Q.職務質問をするためには、不審事由が必要である。
A.考慮要素は、相手方の外形的特徴(車の傷、車種、血が付いている等)、現場の状況・特殊性、物の状態、相手方の顔色・態度(警察官を見て目を背ける)、時間帯(深夜である)、逮捕歴の有無などを総合的に考慮して判断する。

所持品検査の適法性
所持品検査は、明文の規定はないが、口頭による質問と密接に関連し、かつ職務質問の効果をあげる上で必要性・有効性の認められる行為であるから、警職法2条1項の職務質問に付随して認められる場合がある。もっとも、職務質問は任意の手段のみ許され(同条3項参照)、原則として承諾が必要である。
 もっとも、承諾が無い場合に所持品検査ができないとすると、犯罪の予防鎮圧といった行政警察活動の目的を達成できなくなる。そこで、捜索(刑訴法218条1項)に至らない程度の行為であり、強制にわたらない限り許容される場合があると解する。
 そして、捜索に至らない程度であっても、所持人の権利を害するものであるから、警察比例の原則が適用され(警職法1条2項参照)、そこ個別具体的行為の必要性・緊急性、これによって害される個人の法益と保護される広狭の利益との均衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ許容される。

領置(刑訴法221条)

「領置」(221条)
【効果】
 捜査機関が被疑者その他の者の遺留品又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物の占有を取得する行為をいう。物の占有を取得する際は、任意の形態をとるため、占有の取得は任意捜査といえる。一旦領置された後は、捜査機関が強制的に占有を継続することが可能となる。
【趣旨等】
 領置が押収の処分でありながら無令状で許容される趣旨は、物の占有を取得する過程に強制の要素が認められない点にある。任意提出権を有する者から任意提出を受ければ、これも「領置」の対象とすることができる。
領置の対象は、①被疑者その他の者が遺留した物、②所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物である(任意に提出されなければ、差押えの対象物となる)。
【任意処分の限界】
 もっとも、領置であっても、その内容物を把握することによりプライバシー等の権利を侵害することもあり得るから、当該領置処分の必要性・相当性が認められて適法となる。したがって、任意処分(刑訴法197条1項本文)として限界を超えないか検討を要する。

「遺留した物」
遺失物よりも広義であり、占有者の意思に基づかないでその所持を離れた物のみならず、占有者がその意思によって占有を放棄した物を含む。

逮捕の適法性

現行犯逮捕の適法性

要件

① 「現行犯人」にあたること
 ・犯罪の明白性
 ・犯人の明白性
 ・犯罪と逮捕との時間的近接性
② 逮捕の必要性(刑事訴訟規則143条の3準用)

「現行犯人」(刑訴法212条1項)
現行犯逮捕が令状なくして適法と認められている(憲法33条、刑訴法213条)。この趣旨は、「現に罪を行い又は行い終った」(刑訴法212条1項)という客観的状況から、逮捕者にとって犯罪と犯人が明白であって、誤認逮捕のおそれが低く、緊急の身柄拘束の必要性が高いためである。
 したがって、現行犯逮捕の要件としての「現に罪を行い又は行い終った者」とは、①逮捕者にとって犯罪と逮捕との間の時間的近接性が明白で、②逮捕者にとって特定の犯罪と犯人が明白であることをいう。また、現行犯逮捕も強制処分としての逮捕であるから、刑訴法199条2項但書、刑事訴訟規則143条の3の規定が準用され、明らかに逮捕の必要性がないと認められることが消極要件となる。

現行犯逮捕の明白性の判断資料
現行犯人の認定資料は、逮捕者が認識した客観的・外部的状況に限られ、被害者・目撃者の供述や被逮捕者の自白等の供述証拠は客観的状況を補充するものとして認定資料に供し得るにとどまる。

犯罪と犯人の明白性の「犯罪」の範囲(「共謀」について)
共謀についての明白性も必要である。共謀とは、実行行為時における意思連絡を意味する。

準現行犯逮捕の適法性

要件

① 212条2項各号該当性
② 犯罪と犯人の明白性
③ 逮捕の必要性(刑事訴訟規則143条の3準用)

準現行犯逮捕の要件
刑訴法212条2項各号は、犯罪と犯人の明白性を客観的に保障する趣旨の要件である。したがって、まず刑訴法212条2項各号のいずれかに該当する必要がある。
次に、「罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる」(刑訴法212条2項柱書)必要がある。この要件は、犯罪と犯人の明白性を意味し、これは①犯行と逮捕との時間的近接性、②刑訴法212条2項各号による明白性を担保する程度、③その他の事情を総合的に考慮して判断する。
また、準現行犯逮捕も強制処分としての逮捕であるから、刑事訴訟規則143条の3の規定が準用され、明らかに逮捕の必要性がないと認められることが消極要件となる。

逮捕・拘留

違法逮捕の場合の勾留却下の可否
逮捕に重大な違法がある場合には、司法の無瑕性、将来の違法捜査抑止の見地から、勾留請求を却下すべきである。刑訴法206条2項では、勾留請求の時間制限違反の場合に、勾留請求を却下する旨規定するが、却下理由をこれに限定する理由はなく、これに準じる重大な違法がある場合には、勾留請求を却下すべきである。

捜索・差押え

捜索の要件
➀ 特定の犯罪事実の嫌疑が存在すること
② 差押目的物が存在する蓋然性
③ 捜索の必要性
④ 捜索対象の特定

差押えの要件
➀ 特定の犯罪事実の嫌疑が存在すること
② 被疑事実との関連性
③ 差押えの必要性
④ 差押え対象の特定

令状の呈示
Q.110条は、令状の呈示を求めている。しかし、その時期については定められていない。令状は、執行後に呈示することはできるか。
A.令状呈示の趣旨は、令状を呈示することによって、被処分者に捜索・差押えの範囲を明示し、手続の公正を担保するとともに、不服申立の機会を確保することにある。そのため、原則としてして令状執行に着手する前にする必要がある。
 もっとも、令状呈示は令状主義(憲法35条1項)の直接の要請ではない。一方で、必ず事前の令状呈示を求めると、証拠隠滅などにより捜索・差押えの目的が達成されないおそれがある。そこで、証拠隠滅の防止等の必要性が高度に認められる場合には、相当と認められる範囲であれば、事後的な呈示であっても適法な令状呈示と認められる(最決平成14年10月4日)。

捜索許可令状に基づき捜索できる範囲
Q.捜索できる範囲は、「捜索すべき場所」(憲法35条1項、刑訴法219条1項)に限定される。捜索許可状提示後に「捜索すべき場所」に届いた荷物は、「捜索すべき場所」に含まれるか。
A.刑訴法219条1項が令状に有効期間を要求していることからすれば、令状裁判官は、令状呈示時点にかぎらず、有効期間内における捜索場所の捜索についての「正当な理由」を審査しているといえる。
 したがって、捜索許可状の有効期間内に捜索場所の管理権者によって捜索場所内で受領された物であれば、「捜索すべき場所」に含まれるといえる。

「捜索すべき場所」
Q.○○社を「捜索すべき場所」としている。社員の物も「捜索すべき場所」に含まれるか。
A.「捜索すべき場所」は、管理権ごとに特定(刑訴法219条1項)されることが求められる。そのため、○○社を「捜索すべき場所」として明示する捜索差押許可状の効力は、○○社内に存在する物については、○○社の管理権に属するものについてののみ及ぶ。

「捜索すべき場所」と「物」
Q.捜索許可状に明示されていない物件は、捜索許可状記載の「場所」に含まれるか。
A.捜索場所に附属している物については、これに対する権利・利益が捜索場所に対する管理権に包摂され、捜索場所と一体をなしているとかいされるため、捜索場所に対する令状裁判官の審査によって、捜索場所に附属している物についても令状審査を経ているといえる。
 したがって、捜索場所に附属する物といえる場合には、「捜索すべき場所」に含まれると解する。

「捜索すべき場所」と「着衣・身体」捜索
東京高判平成6年5月11日
場所に対する捜索差押許可状の効力は、①当該捜索すべき場所に現在する者が当該差し押えるべき物をその着衣・身体に隠匿所持していると疑うに足りる相当な理由があり、②許可状の目的とする差押を有効に実現するためにはその者の着衣・身体を捜索する必要が認められる具体的状況の下においては、その者の着衣・身体にも及ぶと解するのが相当である。

予試験の適法性
Q.捜索差押令状に基づいて覚せい剤らしき物を発見した。これを予試験することができるか。
【任意処分】原則として、相手方に任意提出を求め(差押え⇒領置)、更に同意を得た上で予試験を行うべきである(鑑定処分⇒任意処分)。
【必要な処分】捜索差押令状の

被疑事実との関連性が認められる証拠の範囲
証拠物は、被疑事実それ自体を立証する価値を有する物だけではなく、その情状事実を立証する価値を有する物であってもよく、それらの事実を直接証明する証拠のほか、間接証拠や補助証拠も含まれる。関連性の程度はこの順で弱くなり、差押えの必要性も小さくなる。

関連性変動説
Q.関連性の有無を確認することなく差押えることができるか。
A.被疑事実との関連性は、捜査上の利益と対象者の不利益とのバランスによって決定される規範的なものである。そのため、必要とされる関連性の程度は一義的に決まるものではなく内容確認が困難とされる事情があれば、関連性が認められる場合がある。
 具体的には、差押えようとする目的物の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報の存否をその場で確認していたのでは記録情報が損壊される危険がある時は、内容の確認をしなくとも関連性が認められ、目的物を差し押えることが許されるものと解される。

関連性の検討の基準時
差押え対象物は、被疑事実関連性のある物に限られ、この関連性は差押えの時の事情を基準に判断する。

逮捕に伴う無令状捜索・差押え

要件【相当説】

① 被疑者を「逮捕する場合」であること
② a.人の住居、建造物等に入り被疑者を捜索すること、
  b.「逮捕の現場」での差押え、捜索又は検証をすること 
③ ・[被疑者に属する場所・物]:必要性(刑訴法102条1項、222条1項)
  ・[被疑者以外の者に属する]:押収すべき物の存在を認めるに足りる状況(刑訴法102条2項)

「相当性」「緊急処分説」

相当説
 「逮捕の現場」には、被疑事実と関連する証拠が存在する蓋然性が高く、しかも、適法な逮捕があることを前提とすれば、捜索差押えの「正当な理由」(憲法35条)要素である「犯罪の嫌疑の存在」、つまり被疑事実の存する蓋然性も認められる。
 そのため、刑訴法220条1項2号は、事前の令状審査なく捜索・差押えを行うことも認められる。

緊急処分説
 「逮捕」と「捜索差押え」は別の強制処分であり、令状なく捜索差押えをすることは令状主義(憲法33条、35条)に反し原則として許されない。この令状主義を重視して、逮捕を完遂させるために、被逮捕者・第三者の抵抗を抑圧して被逮捕者の逃走を防止し、同時に被逮捕者及び第三者による現場の証拠の破壊を防止する緊急の必要性がある場合にのみ、刑訴法220条1項2号は無令状での捜索差押えを許容したものである。

無令状捜索・差押えの検討すべき要件 
① 「逮捕の現場」にあたること
② 逮捕被疑事実に関連する証拠物が存在する蓋然性

「逮捕する場合」(法220条1項柱書)
【相当説】
 刑訴法220条が令状主義の例外を認めた趣旨は、逮捕現場における証拠存在の蓋然性が高いことにあるとすると、逮捕の前後に多少時間が隔たったとしても、逮捕が予定されていれば足りると解する。したがって、逮捕着手の前後は問わず、被疑者不在の状況下での捜索・差押えもありえる。
【緊急処分説】
 逮捕行為に際して、被逮捕者が証拠を隠滅するおそれが存在する範囲である必要があるため、逮捕との時間的接着性が厳格に要求される

「逮捕の現場」(法220条1項2号)
【相当説】
刑訴法220条1項、3項にて無令状の捜索差押えを認めるのは、逮捕の現場において、被疑事実に関連する証拠が存在する蓋然性が高く、適法な逮捕に随伴する限り捜索差押えの要件を充足していると考えられるため、改めで司法審査を経ることが不要であると考えているためである。
 したがって、「逮捕の現場」とは、令状の発付を受ければ捜索できる範囲をいい、逮捕された場所と同一の管理権及ぶ範囲をいうと解する。
【緊急処分説】
被逮捕者が証拠を隠滅することが可能な場合に認められる。したがって、被逮捕者の身体及び同人の手の届く範囲に限られる。

逮捕の地点から離れた地点での実施
Q.逮捕の地点から○○m離れた地点で差押えが実施されている。「逮捕の現場」(刑訴法220条1項2号)といえるか。
A.刑訴法220条1項2号、同条3項の趣旨は、逮捕の現場における証拠存在の蓋然性の高さにあるところ、被疑者の身体・所持品中の証拠存在の蓋然性の高さは被疑者の場所を移動しても変化するものではないといえる。
 もっとも「逮捕の現場」という文理上限定的であるから、①その場でただちに捜索・差押えを実施することが適当でないことに加え、②速やかに、③被疑者を捜索・差押えの実施に適する最寄りの場所まで連行した上で差押えを実施したという場合であれば、被疑者の身体・所持品を「逮捕の現場」と同視することができると解する。

関連性の検討の基準時
差押え対象物は、被疑事実関連性のある物に限られ、この関連性は差押えの時の事情を基準に判断する。

接見交通権

接見指定の要件

① 「弁護人」又は「弁護人となろうとする者」との接見である場合
② 検察官・司法警察職員が接見指定したこと
③ 公訴の提起前であること
④ 捜査のため必要がある時
⑤ 被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するものにあたらないこと

「捜査のため必要がある時」(刑訴法39条3項)
 刑訴法39条3項は、被疑者の厳格な身柄拘束期間に鑑み、接見交通権と身柄拘束している被疑者を利用する捜査の必要性との調整を図る規定であり、接見交通権が憲法34条の保障する弁護人選任権に由来する重要な権利であることをに鑑みると、例外的に指定を許容する趣旨であるといえる。
 そうすると、「捜査のため必要がある時」とは、弁護人等の申し出に沿った接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生じる場合をいう。

捜査に顕著な支障が生じる場合

・ 現に取調べ中である場合
・ 実況見分検証に立会わせている場合
・ 間近い時に取調べ等をする確実な予定があり、予定通り開始できなくなるおそれがある時

初回接見
 弁護人になろうとする者と被疑者との初回接見は、被疑者にとって弁護人の選任、助言の機会を得る最初の機会であって、速やかにこれを行うことが被疑者の防御の準備にとって、特に重要である。
 そこで、捜査機関は指定にあたって、弁護人となろうとする者と協議し、即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば、捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能かどうかを検討し、これが可能なときは、たとえ短時間であっても時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべき義務がある
 これを認めなければ、「被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限する」(刑訴法39条3項但書)といえる。

一罪の一部起訴

一罪の一部起訴の可否
 検察官には、起訴猶予の裁量(刑訴法248条)があり不起訴も認められる以上、一罪の一部起訴も当然に認められ、事案の軽重、立証の難易度など諸般の事情を考慮し一罪の一部についてのみ起訴することができる。
 したがって、検察官が裁量権を有する以上、検察官の起訴裁量の合理的範囲内であれば適法である。

訴因

訴因の特定

「罪となるべき事実」(刑訴法256条3項)
Q.公訴の提起には、できる限り「罪となるべき事実」を特定しなければならない。本件起訴状は特定されているといえるか。
A.「罪となるべき事実」(刑訴法256条3項)とは、特定の構成要件に外とする具体的事実をいうから、まず「罪となるべき事実を特定」(刑訴法256条3項)したといえるには、①被告人の行為が特定の構成要件に該当するか判定できる程度の具体的事実の記載が必要である。
 また、訴因の機能は、審判対象の画定及び被告人に対する防御機能の明示にあり、それらは表裏の関係にあるから、審判対象画定の見地から他の犯罪事実と識別できる程度の事実の記載が必要である。
 よって、訴因の特定には、①被告人の行為が特定の構成要件に該当するか判断できる程度の具体的事実、②他の犯罪事実と識別できることが必要である。

訴因変更の要否

訴因変更の要否
Q.訴因手続を経ずに訴因と異なる認定をしたことに違法はないか。○○の訴因で○○を認定するためには訴因変更手続(刑訴法312条1項)を要するといえるか問題となる。
A.まず、訴因の識別機能にかんがみて、①審判対象の画定に不可欠な事実について変動があった場合には、訴因変更が必要であると解する。
 次に、訴因の告知機能(防御機能)にかんがみて、②被告人の防御にとって一般的に重要な事項について、検察官が訴因で明示した場合、訴因と実質的に異なる事実を認定するには原則として訴因変更が必要であると解する。もっとも、❶被告人に不意打ちとならず、かつ、❷認定事実が訴因変更に比べて被告人に不利益でないのであれば、例外的に訴因変更を要しないと解する。

共謀の存否」
Q.○○の訴因で同罪の共同正犯を認定するためには、訴因変更手続(刑訴法312条1項)を要するか。
A.(あてはめ)
①について:六何の原則(いつ、どこで、誰が、なにを、いかにして)の事実が画定されていれば、他の犯罪事実と識別することができるから、共謀の存否は審判対象の画定に不可欠な事実にあたらない。
②について:共謀の存在は、事案によって情状で不利に評価されることもあるから、被告人の防御にとって一般的に重要といえる。(❶❷は、個別事情による)

訴因変更の可否

訴因変更の可否
Q.訴因変更することはできるか。「公訴事実の同一性」(刑訴法312条1項)の範囲が問題となる。
A.訴因変更制度は、1個の刑罰権に関して2個以上の訴因が構成され別訴で審理されることによって二重に処罰されることを訴因変更を認め別訴を禁止することで、確実に防止するためのものである。
 そして、両訴因の基本的事実関係が同一であれば、刑罰権は1個であり、それぞれを別訴で審理すると二重処罰の危険が生じる。基本的事実関係の同一性は、両訴因の日時、場所、行為態様、方法、被害の種類、程度などの事実の共通性により判断する。
 もっとも、両訴因が事実関係を異にする点があり、同一性の判断が困難である場合は、補充的に両訴因の非両立性も考慮して判断する。

前科証拠

前科証拠の証拠能力
 前科に係る犯罪事実や被告人の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の証拠とすることは、①被告人に対してこれらの犯罪事実と同種の犯罪を行う犯罪性向があると推認し、②これをもとに犯人が被告人であるという推論過程を経ることになる。
 上記の推論は、不確実な推認であるにもかかわらず、一見して確実な推認かのような実証的根拠に乏しい人格的評価を伴うことになるため、事実認定を誤るおそれがあるため、原則として証拠とすることが許されない。
 もっとも、①前科にかかる犯罪事実が顕著な特徴を有し、②かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものである場合には、例外的に証拠とすることが許される。なぜなら、この場合には犯罪性向を介さず犯人性を推認でき、経験則に照らして他の者が類似した犯行を行うことが考えられないからである。

自白法則

約束による自白
 法319条1項で任意性に疑いがある自白が証拠能力を否定されるのは、このような自白が類型的に虚偽自白である危険性が高いためである。任意性に疑いがあるか否かは、①被疑者に対する働きかけにより被疑者が強い心理的影響を受け、②その結果、類型的に虚偽自白を誘発するような状況でなされた自白か否かを基準として判断すべきである。

反復自白
反復自白が319条1項によって、証拠能力が否定されるかは、当初の自白についての心理的強制と虚偽の自白が誘発するおそれの影響が残存・遮断がされたか否かによって判断する。具体的には、第1取調べの方法、取調官の交替、取調べの時間的間隔・場所的同一性、弁護士との接見の有無、その他影響遮断措置の存否等を総合的に考慮する。

第三者供述による自白
319条は直接適用することはできない。原則として、供述の証明力の問題であり、違法な強制が加えられて任意性が全く欠如するような場合にのみ例外的に刑訴法319条に基づき証拠能力がなくなると解する。供述でなく、書面である場合には、321条1項2号、3号として許容されるか問題となる。

自白法則と違法種集証拠排除法則(二元説)
自白を内容とする供述証拠であっても、証拠物の場合と同様、違法収集証拠排除法則を採用できない理由はない。したがって、自白を内容とする供述調書について、手続の違法が重大であり、これを証拠とすることが違法捜査抑制の見地から相当でない場合には、証拠能力を否定すべきであると解する。

不任意自白と派生証拠
自白法則の虚偽排除という証拠排除の根拠は、派生証拠には及ばない。しかし、虚偽自白を生じさせる取調べ手法を抑制するという要請に鑑みて、不任意自白と派生証拠の関連性、派生証拠の重要性などを総合考慮して、取調べを要請するという要請が真実発見の要請を上回る場合には、派生証拠の証拠能力を否定すべき場合がある。

補強証拠

補強証拠
【趣旨・適用場面】
 憲法38条3項、刑訴法319条2項の趣旨は、自白の偏重による誤判の防止にある。また、本条は自白のみで合理的疑いを超える心証が得られる場合に適用される。なぜなら、それに至らない自白であれば、他の証拠が必然的に求められ、上記趣旨に反する危険を生じないからである。
【補強部分】
 そして、自白の偏重による誤判を防止するためには、自白内容のうち犯罪事実の客観的事実の一部の裏付けがあれば足りる(罪体説)。
【証明力の程度】
 補強証拠も証拠である以上、証拠能力がある必要がある(刑訴法317条)。そして、誤判防止の趣旨から、補強証拠は自白から実質的に独立した証拠である必要がある。また、誤判防止の趣旨からすれば、補強証拠独自の証明力は問題とならず、自白の真実性を担保するに足りる程度げあればよい。

共犯者の自白不要説
Q.共犯者の自白のみを根拠として判決することができるか。
A.補強法則の趣旨は、自白偏重の防止である。そこで、共犯者は本人の自白と同視することができ、引っ張り込みの危険があること、自白しか証拠がない場合に自白した者は無罪となり、自白しなかった者が有罪となる非常識から、この場合にも適用するという見解がある。
 しかし、①共犯者の自白には反対尋問が可能であり、そもそも共犯者は本人とは同視できないし、②裁判官も引っ張り込みの危険性を踏まえ審理するから、自白偏重のおそれもないといえる。③さらに、反対尋問を経た共犯者供述が被告人の自白よりも証明力が高いのは当然であり、非常識ともいえない。
 したがって、共犯者の自白は反対尋問を経れば自白偏重の危険はなく、補強法則は適用されない。

伝聞法則

伝聞証拠
伝聞証拠が原則として証拠能力を有しないとされている刑訴法320条1項の趣旨は、公判廷外の供述は、知覚、記憶、表現、叙述の過程に誤りが入りやすいにも関わらず、反対尋問等により吟味することができず、事実認定を誤らせるおそれがあるため、これを証拠調べから排除する点にある。
 したがって、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする証拠であって、その内容の真実性が要証事実との関係で内容の真実性が問題となるものをいうと解する。

非伝聞の例

①発言が犯罪を構成する場合
Aの名誉毀損を立証するため、「Aが『犯人はXだ。』と言った」というAの供述を含むBの供述。
⇒Aが発言をしたかどうかをBに尋問すれば足りるため、非伝聞である。

②供述の存在自体が状況証拠となる場合
Aの精神異常を推認するため、Aの「俺はアンドロメダの帝王だ。」という供述を含むBの供述。
⇒Aがアンドロメダの帝王であることの真偽は問題にならないから、非伝聞である。

③同一人の不一致供述
Aが公判廷で「犯人は甲だ」と発言した。以前に「犯人は甲でない」と供述していた。
⇒Aが不一致供述をしたという事実を立証すれば弾劾目的は達成するため、非伝聞である。

立証趣旨
当該証拠の取調べを請求する当事者がその証拠によって立証しようとする事実をいう。

要証事実
具体的な訴訟の過程でその証拠が立証するものとみざるを得ないような事実をいう。
※要証事実とは、一般的に主要事実をいうが、伝聞法則では間接事実・補助事実も含む。
※原則として、当事者の提示した立証趣旨を前提にするが、当該訴訟において争点との関係で立証することが無意味である場合には、裁判所が用いることに意味がある要証事実を決定する。

心理状態の供述
➀知覚・記録の過程を欠いている点でも、誤りが混入する危険性は低いこと、表現、叙述の対象が現供述者自身の心理状態である点でも、誤りが混入する危険性は低いこと、➁表現・叙述の真摯性は、全ての証拠に共通する関連性の問題であり、供述時の態度や発現の状況等から吟味することも可能であり、必ずしも原供述者に対する反対尋問を必要としないこと、③人の心理状態を立証するには供述時の本人の供述が裁量の証拠であって、これを伝聞証拠とすると、伝聞例外の要件を充足できずに採用困難となる。
※心理状態の供述も言葉・発現が状況証拠となる場合の1つであるがゆえに非伝聞と考える説もある。

再伝聞 324条類推適用
刑訴法320条1項は、伝聞証拠として「公判期日における供述に代えて」証拠とすることはできないと定めている。伝聞証拠は法定の例外要件が具備されれば、「公判期日における供述」(324条)と同視することができる。したがって、再伝聞は、324条を準用し、各伝聞過程について伝聞例外の要件が具備されれば、証拠能力が認められると解する。

伝聞例外

刑訴法321条1項2号

要件

1.供述不能の検面調書
 ① 供述不能

2.相反供述の検面調書
 ① 「前の供述と相反するか若しくは実質的に異なった供述」
 ② 相対的特信情況

強制退去と証拠の許容性
憲法37条2項の保障する証人尋問権は、公判期日に喚問された証人のみならず、公判廷外の現供述者に対するものをも含む。そのため、当該外国人の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともあり得る
 そして、手続的正義の観点から公正さを欠くか否かの判断は、当該外国人の収容の理由および時期、強制送還の態様・時期、証人尋問請求の時期、証人尋問決定の時期、関係機関の連絡・調整状況などの諸般の事情を考慮して、事案の真相解明の利益と被告人の証人尋問権の保障の調和の観点か判断する。

証言不能
供述不能の要件も証人尋問が不可能又は困難なため例外的に伝聞証拠を用いる必要性を基礎付けるための要件であるから、一時的な供述不能では足りず、その状態が相当程度継続していなければならない。

相対的特信情況
 以前に行われた公判期日外の検察官に対する供述が、公判期日における供述よりも信用できるような特別の状況が存することを意味するものであって、それぞれの状況を比較し検察官の面前のほうが信用すべき供述がされる蓋然性が高いことをいう。

刑訴法321条1項3号

供述不能事由
 証拠として利用する必要性が高い場合を例示したものであるが、安易に供述不能を認めると、被告人の反対尋問権を侵害するおそれがある。そのため、証人の証言拒絶については、例示列挙事由に匹敵する公判供述の利用不能と認められる場合にのみ供述不能の要件を充たすと解する。
 具体的には、証言拒絶の意思が固く、期日を改めることや、尋問場所や方法に配慮しても証言する見込みがない場合がこれにあたる。

「犯罪事実の存否に欠くことができない」
当該供述を証拠とするか否かによって事実認定に著しい影響を生じさせる可能性(事実認定に実質的に必要)がある場合をいう。

「特に信用すべき状況の下にされたものであるとき」
絶対的特信情況をいう。そしてその判断は、当該供述を信用すべき供述時における外部的付随的事情をもとに考慮し、供述の内容自体も、信用性のある状況を推知するためならば判断資料として用いることができると解する。

刑訴法323条

業務文書
 業務遂行の過程で、規則的、機械的、連続的に作成されるもので、虚偽の介入するおそれが少ないものをいいう。

「特に信用すべき状況」(323条3号)
321条1項3号と対比して、323条1号、2号に準じるような高度の信用性を保障する類型的な外部的状況をいうと解する。
※刑訴法321条1項3号の要件よりも簡易な要件であるため、先に323条3号を検討する必要がある。

弾劾証拠

弾劾証拠の許容性(限定説)
刑訴法328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述録取書、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述またはこれと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる(自己矛盾供述)と解する。
 なぜなら、①自己矛盾供述に限らないとすると、第三者の矛盾供述が弾劾として機能する場合、裁判官がその内容を信用することを要し、必然的に第三者の矛盾供述の内容たる事実が裁判官の心証上は認められたことになり、実質的に実質証拠として機能することになり、伝聞法則が骨抜きになる。
また、②自己矛盾供述であれば、その内容の真実性を前提とするのではなく、同一人が同一事項について、「公判廷外において、公判廷供述と矛盾する供述を行ったという事実」を証明するによって、公判廷供述が信用できないことを立証することになり、非伝聞であるといえる。
そして、③刑訴法328条にあえて規定したのは、自己矛盾供述すら弾劾証拠として用いることは許さないとする厳格な考え方を避けるために注意的に示したことにある。

弾劾証拠の立証の程度
自己矛盾供述の存在は、補助事実にあたる。補助事実は、刑罰権の存否及び範囲を画する事実ではないが、厳格な証明を要する実質証拠の証明力に大きな影響を与えるものである以上、厳格な証明が必要であると解する。

「証明力を争う」の意義
証明力の減殺に限って認められ、証明力の増強、回復を含まないと解する。
証明力の増強するためには、内容の真実性を前提にしないと意味が無く、内容の真実性を前提とする証拠はそもそも弾劾証拠として許容されない。
また、回復とは弾劾を弾劾することをいうところ、そもそも弾劾証拠としての自己矛盾供述は、信用性を前提としない非供述証拠であるから、これを弾劾することに意味はないし、別の機会に法廷供述と一致する供述をしたとしても、供述者の信頼性が回復するとはいえないから、証明力の回復も原則として含まないと解する。
もっとも、自己一致供述の真実性を前提とすることなく、証言の時期、証言の態様等の事情から自己一致供述の証明力を回復させる事情があるというような例外的な場合には、「回復」も証明力を争うに含まれる。

証言後の自己矛盾供述
①刑訴法328条には、「前にした」という限定がない。②また、憲法37条2項で保障する証人尋問権は、z実質証拠に関するものであって、補助証拠についてまで保障するものではなく、この点について問題がないこと、③自己矛盾供述の存在は非伝聞であるから、自己矛盾供述の時期を限定する理由はない。以上の理由から、証言後の自己矛盾供述であっても刑訴法328条の弾劾証拠として許容されうる。

違法収集証拠排除法則

違法収集証拠排除法則(①重大違法、②証拠許容不相当)
司法の廉潔性の維持及び将来の違法捜査抑止の観点から、①証拠収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②これを証拠として許容することが将来における違法捜査抑止の観点からして相当でないときには、その証拠能力は否定されると解する。

考慮要素

重大な違法
①手続違反の程度、②令状主義から潜脱する捜査機関の意図の有無、③強制の程度、④手続違反がなされた状況など

排除の相当性
①違法の程度、②違法行為と証拠との関連性、③違法行為の頻発性、④事件の重大性、⑤証拠の重要性など

違法性の承継(派生証拠の証拠能力)
Q.直接の証拠収集手続に違法なはいものの、先行手続に違法がある。先行手続の違法が後行の証拠収集手続に承継され、証拠排除されないか。
A.司法の廉潔性の保持・将来の違法捜査の抑止という違法収集証拠排除法則の趣旨を貫徹するためには、直接の収集手続に瑕疵がなくても、証拠を排除すべき場合がある。具体的には、①先行手続に違法があり、②先行手続と証拠収集手続との間に密接な関連性がある場合には、違法評価において両者を一体としてみなすことができるから、後行手続である証拠収集手続の違法性が認められると解する。
 違法性の承継が認められた場合には、証拠収集手続において、①証拠収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑止の観点から、相当でない場合には、その証拠能力が否定されると解する。

毒樹の果実
Q.証拠能力のない第1次証拠と関連性のある証拠(毒樹の果実)の証拠能力は認められるか。
A.
【第1.毒樹の果実該当性】 
違法な手続によって得られた証拠と因果性を有する証拠は、違法収集証拠排除の趣旨を貫徹する必要がある。そこで、[後行手続により収集した証拠]が[違法な先行手続により収集した証拠]と関連性を有するときは、派生証拠(毒樹の果実)として証拠排除すべき場合がある。
【第2.毒樹の果実の証拠能力】
 そして、①先行手続の違法の重大性、②[違法な先行手続]と[派生証拠(毒樹の果実)]との間の密接関連性の程度を総合して、派生証拠の証拠能力を認めることが、将来における違法捜査抑止の見地から相当でないと認められる場合には、証拠能力を否定すべきである。

択一的認定

明示的択一的認定
Q.「犯罪の証明」(刑訴法333条1項)があったといえ、判決で刑の言渡しができるか。
A.いずれの訴因事実も証明されておらず、利益原則に反する。また、異なる構成要件を合成した構成要件で処罰することになるため、罪刑法定主義(憲法31条)にも反する。したがって、「犯罪の証明」があったといえない。

包括関係における択一的認定
 両訴因の事実が包括・被包括関係にある場合は、被包括事実は、確信に達しており、包摂事実について証明がないに過ぎないから、被包摂事実について認定しても、利益原則・罪刑法定主義に反しないから、「犯罪の証明」があり「罪となるべき事実」(刑訴法335条1項)に欠けることはないから、判決することができる。

一事不再理効

一事不再理効
判決の確定に伴って生じる、同一事件に対する再度の公訴提起の禁止効果をいう

一事不再理効の範囲
一事不再理効は、起訴状記載の訴因と「公訴事実の同一性」が認められる範囲において生ずる。なぜなら、一事不再理効の根拠が、被告人を再度の訴追による二重の危険から解放することにあり(憲法39条後段)、検察官は公訴事実の同一性が認められる範囲において訴因変更が可能で(刑訴法312条1項、被告人はその範囲で刑事訴追・処罰の危険を負担したといえるためである。
 そして、公訴事実の同一性は、①公訴事実の単一性又は②狭義の同一性があることをいう。

公訴事実の単一性の判断
訴因制度を採用する現行法において、審判対象は訴因であり、検察官は一罪の一部起訴をすることもできる以上、一事不再理効の適用範囲の判断における公訴事実の単一性の判断についても、前訴と後訴の訴因のみを対象として行うべきである。

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